ヒアリングの際の仮説と先入観

 コンサルティングの際、対象の会社の問題点、及びその原因分析をするために、業界の知識や会社の内部情報を集めて、仮説を立てる。そして、その仮説が正しいかどうかを企業ヒアリングである程度判断し、当初想定した仮説に間違いがあれば、再度仮説を立てて検証することを繰り返す。この手法で行けば、問題点の本質から大きく逸脱することがなく、ゴールにたどり着けるはずである。
しかしながら、全てのコンサルティングの現場で、十分なヒアリング時間を確保できるとは限らない。例えば公的機関の専門家派遣や企業診断の場合は、コンサルティング日数が限定されていることが多い。追加ヒアリングを経営者にお願いすることも可能ではあるが、別途時間を割いてもらう必要があることや、この段階ではまだ企業側に費用負担が発生しておらず、経営者自身、まだ本気でないことも多いので、なかなか追加ヒアリングは実施しづらいのが実情である。
例えばヒアリング予定が1日しか想定されていない場合は、事前に収集した資料から、問題点、原因を割り出しておき、ヒアリングの現場ではそれを確認することに留まってしまいがちである。本来であれば、問題点の原因究明こそが重要であるはずが、ヒアリングの段階では、事前分析で想定した仮説、「問題点の原因は○○に違いない」が先入観となり、仮説を裏付けるような方向に話を自然と誘導してしまい、検証をした気になっているケースもある。
当然、「先入観」に満ちた仮説に基づいて対応策を設定したところで、十分な効果は上げられない。

このようなことには、特に一人で業務を行っていると陥りやすい。
しかし、この件に関しては打開策がある。例えば、知識・経験の豊富な方に自分の意見を聞いてもらうこと。発表することで、自分の結論を自らで客観的に捉えられることがある。更に助言をもらうことができれば、より良い結論を導き出すことが可能となる。
私自身、士業で独立して10年以上になるが、ほとんどの期間、一人で判断してきたことを考えると、今手にした相談できる環境はとても有難いものである。もちろん、相談の際には情報の守秘に留意する必要はあるが。

社会保険労務士・中小企業診断士 加賀 文人

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