中小の印刷会社が生き残るために

私は、印刷会社に社員として勤めた経験と、経営者として会社を廻していた経験を活かして、印刷関連業の経営支援に取り組んでいます。
過去に印刷会社にいたという話をすると決まって、印刷業は厳しいですね、という話になります。
確かに印刷産業の市場規模は年々縮小しています。出荷額はピークである1991年には約8.9兆円でしたが、2016年には約5.1兆円と、ピーク時の約6割まで縮小しています。
主な要因としては、インターネットの普及、ペーパーレス化、書籍のデジタル化などがあげられます。これらの急速な発展により紙媒体が減少しています。しかしながら、業容が縮小している企業ばかりではありません。私が関わっている印刷会社の中には、経営改善が進んでいる企業、成長をしている優良な企業もあります。

優良な企業には、顧客の課題を解決できる提案力があります。依頼に対し、単に紙などの媒体にインクを乗せ、文字や写真などを刷り上げることだけでなく、顧客の言葉の背景にある真の要望を理解し、最適な企画・提案を行い、ソリューションを提供しています。

今、印刷会社に求められるものが大きく変化しています。例えば、あるキャンペーンを成功させるには、あるいは集客を増やすには、どのようなコンテンツを用意し、どんな手段で情報発信すればよいか、という相談が増えています。また、印刷物にとどまらず、Webやスマートフォン、デジタルサイネージで情報発信したい、動画コンテンツを使いたいという要望も多くなっているようです。
これらは、デジタルマーケティング支援と呼ばれ、Web、eメール、ポイントカード、クーポン、POSシステム、データベースなど、あらゆるデジタルデータを総合的に活用するマーケティングの手法です。このような様々な要望に応じ、顧客の課題を解決することが印刷会社の新たな使命となりつつあるのです。

中小の印刷会社が生き残っていくために必要なことは、従来の紙の印刷にとどまらず、印刷の本質は「情報を届けたい人に、情報を届けるお手伝いをすること」にあると捉え、事業領域を再設定すること、もう一つは、顧客の真の要望を理解し、最適な企画・提案を行い、ソリューションを提供することです。そのためには、DTPから後加工までの印刷知識や技術は勿論のことですが、それに加えて、デジタルマーケティングに関する知識と技術を提供できる人材の育成、確保も必要不可欠と言えましょう。

 

中小企業診断士 小竹 繁夫

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