プロ意識

最近、大きな病院にお勤めのベテランの看護師の方とお会いする機会があり、その道のプロから色々と面白い話を聞けたので少しご紹介したい。

「採血は見るんじゃない、感じろ」
とある私の友人はかなり恰幅がよく、血管が見えづらいため採血の際に何度も針を刺された挙句、手の甲から採血されてとても痛い思いをしたと聞いた。しかしこのベテラン看護師いわく手の甲から採ったら負けとのこと。患者さんから「血管細いんです」と言われると「いいから見とけ(心の声)」と、見えない血管を「感じて」一発で成功させるのだという。やはり採血には経験とセンスが必要とのことで、採られる側としては未熟でセンスのない看護師さんに当たらないことを祈るだけである。

「眠らせたいのか、起こしたいのか」
点滴は患者さんの血管の状態や、じっとしているか動き回るかといった患者さんの性格的な面まで考慮して滴下スピードを合わせ、終わる時間を予測して丁度良いタイミングで抜きに行くのがポイントだが、経験が浅いうちはこれがとても難しいらしい。
ちなみに最近はポンプで強制的に輸液する機械式があるそうで、セットさえすれば一定の速度で輸液ができ、終わればアラームが鳴るなど、特に厳密に投与する必要がある場合に使用するらしい。ただ便利なため若手の看護師さんが必要以上に使いがちで、消灯時に睡眠薬を投与するために使用し、入眠した患者さんを終了時のアラームで起こしてしまうといった事例もあるそう。

「ナースコールは鳴らされたら負け」
消灯後は一定の間隔で病室を巡回するのだが、個々の患者さんの状態をきちんと把握し、病状が悪化しそうな場合などは事前に予測してケアすることが大切であり、患者さんから緊急呼び出しをされるというのも負けなのだという。患者さんとしても少なからず遠慮する気持ちがあるため、鳴らすときには既に相当の我慢をされているケースが多く、場合によっては隣のベッドの患者さんが見かねて鳴らすこともあるそうだ。もちろんそうなると病室の他の患者さんたちも起きてしまうということで、避けなければならないのだそうだ。

以上は、お聞きした話のほんの一部ではあるが、ベテラン看護師のプロ意識を垣間見たエピソードだった。

さて、かれこれ5年ほど前になるが、ここで「プロは違う」と題したブログを書いた。自分が長年悩まされてきた症状が、いわゆるスーパードクターの手で劇的に改善し、やはりその道のプロは良い仕事をすると感心した、という内容であるが、最後にそのブログの結言を自分への戒めの意味で再び記して終わりたい。

“医療と事業再生、分野は違えど顧客に価値を提供するという意味では全く同じ。その道のプロとして、かくありたいと強く感じた。いつかお客様に「プロは違う」と言っていただけるとすれば、これほど嬉しいことはない。”

中小企業診断士 大越峡士郎

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