今こそ自社を見つめる

「今はじっと耐える時だと思っています」
「この状況の中でも、気持ちは落ち着いているんですよ」
直近お会いした経営者から伺った言葉です。

コロナ禍の中、報道では、これからさらに嵐が大きくなることを伝え続け、社会の一員である私たちの不安を煽ります。

一方で、冒頭のように、どっしりと構える経営者も多くいます。その背景の一つに、リーマンショックの経験があります。それまで追い風に乗り、目の前の需要という商機に可能な限り応えて、売上高を伸ばした企業も、苦しい状況に立たされることとなりました。その時の反省から、企業によっては、ある得意先に偏った売上構成からの脱却や、資金管理への意識向上など、経営基盤に関わる根本の部分から自らを見直し、あり方を変えていきました。

そして早10年以上たった今、再び大きな嵐が訪れ始めているわけですが、彼らは決して動じないのです。これは、リーマンショックを経験したからではなく、その経験において自らを見つめ直したかどうかに差がありそうです。もし一過性のものと捉え対症療法的に過ごしてきていたら、リーマン時のように慌て、大ダメージを受けることを繰り返したでしょう。

嵐の中で立っている1本の木を想像してみてください。たしかに、嵐はいつか去るものです。しかし、長く続いた時、風向きが変わったり、ガレキが飛んできたりすれば、しっかり根をはっていない木は倒れてしまいます。不確実性が高く、変化の激しい環境においては、平時以上にしっかりと、根をはっておく必要があるのです。

そもそも自社の事業は誰のために・何を・どんなこだわりをもって提供しているのか?また、自社の経営基盤や運営のスタンスにおいて、わかっていたけれど見過ごしていたところはなかったか?等、自社の軸やあり方を問われる時がきました。この大嵐の中では、この根っこを再確認して落ち着きを保ちながら、起きる状況に対して粛々と対応することが一つの術となるのかもしれません。

たとえ木に傷がついたり、花や枝がなくなったとしても、幹が残ればいつかまた、きっと花を咲かせることができます。その先の素晴らしい景色を創るために、この時代を乗り越えていきましょう。

中小企業診断士 杉浦 美奈子

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