NFTが農業を変える?

先日、ある農園の経営者から相談を受けた。まだ40歳代の若手経営者で、サラリーマンを辞めて家業の農園を継いだそうだ。その方からの相談内容は、閑散期の売上を確保するために必要な設備投資の資金調達に関するものだった。農作物は年間で収穫できる時期が決まっているため、収穫期以外はその農作物から売上を確保できない。そのため、年間を通して販売できる商品を開発して売上を平準化したいということだった。

この経営者は、他の農園と差別化を図るために様々な工夫をされており、農園の立ち上げから現在までの取り組みについてとても興味深いお話を聞くことができた。いろいろとお話を伺っていると、次は農園の「NFTトレカ」を発行することに関心があるとのことだった。NFTは「Non-Fungible Token」の略で、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれている。NFTは仮想通貨と同様にブロックチェーンで管理されており、偽造や不正利用が極めて難しく、取引履歴を追跡できる機能を備えている。NFTトレカはNFT技術を使った「デジタル版トレーディングカード」のことで、カードの偽造や改ざんができないだけでなく、過去の取引履歴が全て記録されるので、安心して取引ができるのが特徴である。

ある調査会社によれば、現在のNFTの世界市場規模は約4千億円を超えており、2027年までには2兆円規模に拡大する勢いだそうである。NFTが利用されている主な分野としては、コレクターズアイテム、アート、ゲーム、スポーツ、等となっている。NFTの仕組みを活用することで、NFTトレカをコレクター同士で売買したり、価値ある資産として保有したりすることが可能になるそうだ。このようなNFTトレカを利用した新たなビジネスやサービスがこれからますます増えてくるのかもしれない。

NFTの説明はこれくらいにして、話を農園に戻したい。若手経営者の口から出たNFTトレカという単語に驚いた私は、「なぜ、農園がNFTトレカなのですか???」と思わず聞き返した。その経営者によれば、農園がNFTトレカを発行して商売をする方法を簡単に説明すると、農園のNFTトレカを販売し、その所有者に収穫物を提供するのが基本的な仕組みらしい。NFTトレカの売買により所有者が変わり、稀少なプレミアムカードの所有者には特別なサービスが提供されるそうである。まだ初期のアイデア段階で実現するかわからないそうだが、最新のデジタル技術を農園の経営に取り込もうと考える若い経営者の斬新な発想力には感心するばかりだ。果たして、NFTが農業を変える時代が来るのだろうか?

中小企業診断士 秋田 秀美

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