最近、中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築促進補助金)についてお問い合わせをいただきます。ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための企業の思い切った事業再構築を支援するもので、予算規模は約1兆円、補助金上限額も通常枠で6千万円と大型の補助金となっています。
3月12日現在、発表されている概要では、対象は①申請前直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高がコロナ以前の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること、②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組むこと、③補助事業終了後3~5年で付加価値額(または従業員1人当り付加価値額)の年率平均3%以上増加の達成が要件となっています。こうした要件を見ると、これまでの「ものづくり補助金」と比べて、申請準備にかなり時間が必要になると思われます。
補助金は、事業完了後に支払われる清算払いのため、売上高が減少した状況で計画している新事業に必要な資金を事前に確保しなければなりません。金融機関からの資金調達を検討するのであれば、➁にあるように金融機関の支援を受けながら収支計画、さらに事業が軌道に乗るまでの運転資金を考慮した資金繰り計画を策定することになりますが、まずは新たな事業のビジネスモデルを明確にすることが重要です。
今回の補助金は事業を再構築する訳ですから、ビジネスモデルが変わります。新たな事業の顧客層、当社が提供する商品・サービス、必要な外部資源(取引先等)を決定しなければ、売上高を始め数値計画を策定することができません。さらに、現ビジネスモデル、経営資源も確認しなければ、補助金を有効活用して不足資源を確保することができません。
今回の事業再構築促進補助金は魅力的な事業ではありますが、新しいビジネスモデルに挑戦する点で、既存顧客に対して生産効率を向上する設備投資とは事業リスクが大きく違います。申請を検討しているのであれば、早めに金融機関等にご相談し、あわてずじっくり申請書=事業計画を策定することをお勧めします。
中小企業診断士 梅村 薫