赤字覚悟は美談か。

テレビのグルメ番組を見ていると、いわゆる「デカ盛りグルメ」のお店が紹介されることがあります。グルメリポーターは、器に盛られた量を見ては驚き、値段を聞いては驚きながら、「これで儲けがあるんですか?」などとリアクションをします。お店のオーナーさんは「赤字覚悟」などとおっしゃっています。安くて量の多いメニューを提供する店は、利用者にとってありがたい存在でもあります。


飲食業は開廃業が多い業界で、毎年約16万件が開業しています。その一方、開業3年で7割前後が廃業する業界でもあり、10年続くのは1割程度ともいわれております。美味しい料理を出していれば、店が必ず繁盛するという単純な業界ではありません。お店のオーナーさんにはしっかりとした経営管理が求められます。
独自の仕入れルートを持っており、食材原価を抑制することができれば、「デカ盛り」でも儲けることができるでしょう。また、「デカ盛り」がSNSなどで口コミを呼び集客ができれば、利益率は低くとも、利益高を確保することはできるかもしれません。
赤字覚悟で経営するお店は、本当に赤字なのか、客寄せのための「デカ盛り」だけが赤字で他のメニューで儲けているのか、オーナーさんの本音は分かりません。厳しい飲食業界の中で、競合他店と差別化を図るために、なにかしらの仕組みを作り、目的を持って「デカ盛り」を実施するのは良いでしょう。ただ、本当に儲け度外視で飲食店を経営されているとすると、筆者は少々悲しくなります。事業としてお店を経営する以上、適正に儲けていただきたいと思うからです。目的のない「赤字覚悟」は決して美談ではありません。
世間では毎日のように食料品や調味料の値上げが報道されています。お店を運営するための人件費やエネルギーコストも上がる一方です。飲食店を長く継続していくために、お店なりの「儲けの仕組み」を意識していただきたいと思います。

中小企業診断士  森 正樹

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