建設業A社に通い始めて4年が経過した。A社とは金融機関を通じて補助金申請で知り合うも、残念ながら採択されず誠に申し訳なく立ち去ろうとしたが、何故かコンサル契約を依頼され関係が続いている。現社長は2代目であり自身は土木事業を創業していたが、実父が急逝したため急遽その建築事業も引き継ぐこととなった。経営関与始めたのはその3年後である。当時から建築事業はひどい赤字であり、通い始めた頃はあと1~2年で破綻するかと思われたが、建築事業の売上減少と共に赤字も急速に縮小して何とか存続している。赤字要因と存続経緯は省略するが、要はA社長が建築事業に興味なく、立て直す気力もなかったからである。
当然に資金繰りも厳しく金融支援も得られない状況下で、かつて蓄えた個人資産は削り取られ実母から無心せざるを得ないなど、月末になれば社員が退社した事務所で経営者夫妻が怒鳴り合う光景に立ち会うのが茶飯事となった。勢いに任せ喧嘩別れされると即倒産である。こんな時、コンサルタントとしてやれることは、こうしたらと助言する以前に、夫婦間の言い分に頷くのが精一杯である。別居中で互いに配偶者を非難するチャットが日常的に届き、事情を聞くため折り返し電話したら、何故か逆鱗に触れて「あんたはもうクビだ!」と怒鳴られたのも数知れない。訪問日に社長夫妻がパソコンを挟んで差し向かいで静かに仕事されているのを見て、今月は平和に過ぎますようにと祈っている。
しかし、気難しいA社長の感性は非凡であり、彼が設計した図面で実現する土木事業の施工作品は美しく依頼が殺到するようになった。その一方、業務体制はまだまだ脆弱でコロナ融資の据置き期間を経て、返済計画を何度も修正する交渉が続いている。先代が健在だった頃、自社土地建物の抵当権を解除したことから金融機関からの圧力は強く、コンサルタントに使う金があれば返済優先をと暗に要求されるが、社長夫妻のご判断で継続して頂いている。