
最近、スーパーやドラッグストアなどでセルフレジがどんどん増えてきました。
お店側は人手不足を背景に、作業はできるだけ機械にまかせて効率化を進めています。
レジの列も短くなり、便利になったと感じる人も多いでしょう。
しかしながらふと違和感を覚えることもあります。
それは、セルフレジの横で、スタッフの方が黙って立っている姿です。
顧客はすべて自分で作業しているのに、スタッフは何もせずじっと見ている。もちろん、トラブルがあったときに対応できるように待機しているのはわかります。
けれども「人がそこにいる意味」が見えにくくなると、顧客も少し居心地の悪さを感じてしまいます。
■ 作業は減っても「役割の整理」は進んでいない
セルフレジは、
・商品をスキャンする
・支払う
・袋に入れる
といった作業は顧客自身が進めます。
けれど「スタッフは何をすべきか」が十分整理されないまま運用が始まってしまうことも多いのです。
・何もしないように見えてしまう
・でも防犯やトラブル対応のためには必要
・けれど「それだけ?」と感じてしまう
この中途半端さが、現場の違和感を生んでいるのではないでしょうか。
■ 背景にあるのは「教育の不足」
これまでのレジの仕事は「商品をスキャンする」「お金を預かって釣り銭を渡す」といったはっきり決まった作業でした。
しかし、セルフレジが導入されると、スタッフの役割は「見守り」「声かけ」「トラブル時のサポート」「困っている顧客の早期発見」などに変わってきます。
現場ではこうした“新しいサービスのあり方”について十分に教えられているでしょうか。
・何を基準に声をかければいいのか
・どんな時に積極的に近づくのか
・高齢者や初めての利用者への配慮方法
こうした具体的な動き方が共有されていないと、現場のスタッフは「とにかく立っていればいいのか?」「勝手に声をかけていいのか?」と迷ってしまいます。
その結果、「見ているだけ」になってしまうわけです。
■ これからのサービスは「人の仕事の設計と教育」がセットで必要になる
人手不足が続く中で、お店も企業も「人を減らす」方向に進みがちです。
しかし本当に重要なのは
「人がやるべき仕事は何か?」を整理し、そのやり方をきちんと教えることです。
たとえば
機械は「スピード」や「正確さ」を担当
人は「安心感」「ちょっとした声かけ」「柔軟なサポート」を担当
そして、その動き方を教育・訓練する
こうすることで、顧客も気持ちよくセルフレジを利用できますし、スタッフも自信を持って働くことができます。
■ 「教育しなくてもわかるだろう」は通用しない時代に
多くの現場では今も「経験の中で覚えてほしい」「空気を読んで動いてほしい」という昔ながらの教育の考え方が残っています。
でも、今の時代は
・新人スタッフが増えやすい
・アルバイトや短時間勤務の人が多い
・顧客のニーズも多様化している
こうした中では、感覚に頼らず「教え方を設計する」ことが欠かせません。
これはセルフレジに限らず、これからのサービス現場全体に共通する課題です。
■ 「人を減らす」より「人を育てて活かす」へ
セルフレジをきっかけに見えてくるのは、「人の仕事をどう作り直し、どう教えていくか」というこれからのサービスづくりの課題です。
人手不足だからこそ、
・機械に任せる仕事
・人だからこそできる仕事
を分けたうえで、スタッフにその仕事をしっかり教え、動けるようにする。
こうした考え方ができるお店や企業が、これから先、顧客から選ばれていくのではないかと感じます。