広がるDDSの活用

事業再生中の企業が借入返済の負担を減らす方法とはどんなものがあるでしょう?一番多いのはリスケジューリング(条件変更)でしょう。その他、債権放棄などの方法もありますがなかなか広がってきません。最近、活用が広がっているのはDDSという手法です。DDSとはDebt Debt Swap”の略で、金融機関が既存の債務を他の一般債権よりも返済順位の低い「劣後ローン」に切り替える手法のことをいいます。(例えば15年後に一括返済、企業が破たんしたときの差押えは他の債権の後になるなど)DDSを行うと一定の条件で資本とみなすことができます。それにより、該当企業の格付けが上昇し再生へのスピードが早まる場合もあります。
少し古い資料ですが平成24年に金融庁から発表された「資本性借入金の活用状況について」によるとDDSの利用は平成22年度において、61件であったが、平成23年度には、85件に増加し、平成24年度においては409件(平成22年度に比べて6.7倍の増加)の活用が見込まれている。」とされています。DDSの活用が広がった背景には政府の側がDDSを推進するため積極的に金融機関に働きかけたこともありますが、平成23年11月に金融庁が『「資本性借入金」の積極活用について」』を公表し資本とみなすことのできる借入の明確化を図ったことも一因となっています。具体的には以下のようになりました。

  • 償還条件:15年→5年超
  • 金利設定:業績悪化時の最高金利0.4%→事務コスト相当の金利設定も可能(1%未満が妥当)
  • 劣後性:無担保(法的破綻時の劣後性)→必ずしも担保の解除は要しない。

明確化前のDDSは金融機関には厳しい内容であったために広がらなかったのですが、明確化により金融機関にも使いやすいものになりました。

この金融庁の方針を受け、中小企業再生支援協議会も協議会版「資本的借入金」の見直しを図りました。その時に公表された資本的借入金(DDS)は以下のようなものでした。

(15年・無担保型) (5年超・無担保型) (5年超・有担保型)
対象先 各地の再生支援協議会が第二次対応として認めた案件 同左 同左
貸出期間 15年期限一括返済 5年超に設定した期間に一括返済 同左
適用金利 事務コスト相当の金利設定可能。当初5年間は固定金利とする。(1%未満が適当) 同左 同左
法的破綻時の劣後性 あり 同左 なし(法的破綻前に他の債権に先んじて回収しない。)
期限前返済の可否 原則として10年間禁止 期限前の返済の禁止規定なし 同左
担保の取扱い 無担保 同左 有担保
保証の取扱い 無保証 無保証(例外あり) 同左
みなし資本の逓減方法 残存期間5年未満の場合、1年後とに債権額の20%ずつ資本とみなす部分を逓減させる。 同左 同左

当地区では残念ながらDDSに対して金融機関はあまり積極的ではないように思われます。①DDSを実行することで融資先企業の債務者区分を上げることができる。②地域経済に貢献できる。③事業再生に積極的であることを訴求できるなどのメリットもあります。中小企業の再生を行ううえでの選択肢の一つとして活用が広がっていくことが期待されます。

中小企業診断士 竹上将人

関連記事

コメントは利用できません。