運転資金確保と根保証

先日、ある企業の社長を訪問したとき、「銀行が根保証をしてくれたから、資金繰りの不安が解消された。」と話をされました。続いて「ところで根保証ってどんな内容なの?」と質問されて、私は少し言葉を失ってしまいました。

私:「社長、内容も理解していないのに契約したんですか?」

社長:「とりあえず資金繰りに困ったら●●万円まですぐに借りられるでしょ?」

私:「(少し時間があいて・・・)今日の目的の資金繰りの状況はどうですか?借りられるという心の余裕ができたし、根保証を説明するためにもまずは資金繰り計画をしっかりやっていきましょう!」と、本題に話を戻し、作業を進めました。

この企業ですが、創業から5年目の昨年度にようやく黒字となりました。需要の季節変動があるため、閑散期では一時的に資金不足となることがあり、そのたびに社長が個人的に資金を用意して対応していました。昨年度は目標以上の売上高の達成、利益確保も確定的になり、金融機関等に融資のお願いをしましたが、今までの業績から借入することができず、何とか資金確保をしながらここまでやってきました。初の黒字決算報告書ができた後は、手形貸付で一時的な資金確保もできるようになっていました。今回は金融機関より根保証の打診があり、契約となったようです。

通常の保証は、特定の債務を保証するもののため、債務が消滅すれば保証債務も消滅する付従性があります。根保証は、継続的な取引を見据えた不特定・多数の債務について保証するので付従性がありません。

運転資金確保は安心できる状況になりました。しかし、もともと資金繰りなど財務管理ができていれば、借入金の負担をもっと軽減できた企業と思っています。「作成した資金繰り表について、しっかりPDCAを回していきましょう」と、社長にお話しさせていただきました。

社長は今65歳です。事業収益の目途が立つようになった今こそ、財務内容の正常化を早く達成していただき、保証人等の問題で後継者を決められない悩みを解消できるよう、支援していこうと思っています。

 

中小企業診断士 梅村薫

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