私が関わった改善事例から、経営者が一歩前向きに行動したことで、順調に改善が進んだケースを紹介します。
改善支援では、現事業の収益構造を把握するためにビジネスモデルを確認します。経営者とのヒアリングや会計資料等をもとに売上の源泉となる顧客、提供する製品、サービスに必要な仕入先などの関係を明確にした上で改善の方向性を検討していきます。改善の方向性を検討するということは、今までのやり方を多かれ少なかれ変えることになりますが、長年、経営者をしているため、取引関係も定型的なやり取りで、顧客や取引先に対する固定観念ができています。ヒアリングで経営者からよく出てくる言葉として、「この業界の商習慣上、難しいと思う」、「価格交渉は期待できない」、「お客さんの要望が細かくなって対応できない」など、後ろ向きで受け身の言葉が多く聞かれます。そうした姿勢からか、収支についてもしっかりと把握できていない企業も多くあります。
計画はできても経営者自身が考え方を変え、行動しなければ結果は変わりません。後ろ向きで受け身の姿勢となっている経営者に対して、危機的状況から脱却するために前向きに行動していくための変化を促す必要があります。
社内幹部からの不満を一人で受け止め、役員報酬も従業員以下の状況が続いて家庭もうまくいかなくなっていたある経営者と、縷々話合いを続けました。その結果、後がないことを改めて自覚され、取引先に対して真摯に価格交渉に臨まれました。実際に交渉してみたら前向きに対応していただけたようで、「もっと(受注を)増やせそうだから、定期的に営業していきたい」と、積極的な発言が出るようになりました。一度、前向きな考えになると、あらゆる行動が積極的になるようです。この経営者は従業員任せで疎かになっていた数値管理を自らするようになり、率先して収支管理方法も変えました。長年赤字が続きていましたが、結果としてこの2年は黒字となっています。
急激に変化する昨今の事業環境下で、固定的で受け身の経営姿勢でいては生き続けることは難しい。「経営環境が悪化したから仕方がない」と思われるかもしれませんが、同じ環境下でも成長している企業もあります。事業継続するには、事業環境の動向を把握し、受け身とならず、自ら積極的に行動を変えていくことが必要であると改めて思いました。