皆さんが「中国」という国について、知っていることは何でしょうか。日本の「言論NPO」が2005年から毎年実施している日中世論調査において、昨秋(2016)発表によると、調査対象の日本人のうち、中国に対して「良くない印象を持っている」と答えた割合は91.6%にのぼるとのことです(中国→日本は76.7%)。また、皆さんも目にしたり、経験したりしたことがある「公共の場にもかかわらず大声で話す」「会計前に商品をあけて食べる」「順番という概念がない」といった来日中国人観光客の行動など、どちらかといえばネガティブな内容ではないでしょうか。
2015年中国政府発表によると、中国の人口はおよそ14億人となっています。一方、日本政府観光局発表、2016年訪日外国人観光客統計によると、訪日外国人観光客のうち、中国人はおよそ637万人となっており、皆さんが日本で目にする中国人観光客は中国人全体の0.455%にしかすぎません。
また、私も年に2回ほど中国南部(香港から深圳、広州)に行きますが、日本人だからといって不快な対応をされた、あるいは、不当な料金を請求された、などといったことは一度もありません。逆に、対応の際に少しの中国語(広東語)を話すだけでとても喜んでくれます。
こんなことを述べるからといって、私は中国びいきではありません。むしろ、私もネガティブな印象が強く、「中国も経済の発展に教育やモラルの発展が追い付いていないな」と、どこか見下していた面もありました。しかし、実際に中国に足を運んで、以下のような体験をし、その考え方は全く間違っていたと痛感したどころか、逆に中国を脅威とさえ感じるようになりました。
まず、大学生は非常に勉強熱心です。中国の大学は全寮制で、休日ともなると大学の図書館は満席、スマホをいじる人は皆無というくらい勉強しています。学力中位以上の大学生は、こちらが日本人であるとわかると、英語、(まれに日本語)でコミュニケーションをとろうとしてくれます。比較して、皆さんの周りの日本の大学生はいかがでしょうか。
次に、香港、深圳、広州どの都市でも、訪問するたびに新しい高層ビルの建設が行われています。中国から東南アジアへと世界の企業の進出が移りつつあるとは言いますが、まだまだ経済発展の力強さを感じます。特に、香港では駐車場の都合もあるのでしょうが、路地裏に路上駐車されている車種を見てみても、ベンツやBMWはもとより、中にはポルシェやテスラモーターズなど、高級外車ばかりです。
以上のことは、中国の一つの側面であり、私個人の経験にしかすぎないかもしれません。しかしながら、実際に体験して理解できたことでもあります。今では、ネガティブな印象をあえて日本に発信し、油断させるといった策略ではないのかとさえ感じます。
今回は中国を例に挙げて述べてみましたが、こういった「知っていた」つもりのことが、「理解する」ことで印象や考え方がガラッと変わってしまうようなことは、事業再生の現場でも起こることがあります。経営者は会社が厳しいといった事実を「知っていた」つもりでいたが、私たちの支援により、会社の現状を深く「理解する」ことで会社の危機的状況を改めて認識し、課題解決に必死で取り組んでいただけるようになるといったことは多々起こります。
皆さんも「知ってる」だけで済ませてしまっていることを、「理解する」ことに努めることで、視野が広がり、自分の人生が豊かになるかもしれません。
中小企業診断士 東野 礼
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