「同一労働同一賃金」―正規と非正規の待遇差、あり?なし?

「同一労働同一賃金」は「働き方改革」の実現に向けた取り組みの1つである「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」のキーワードです。

厚生労働省の言葉によれば「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにする。」ことを目指すもの。2020年4月1日より「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、中小企業においても2021年4月から導入されます。

「同一の労働に対して、同一の賃金を支払う。」しごく当たり前で納得感のある言葉ですが、実際のところみなさまの職場ではいかがでしょうか?

以下は「データブック国際労働比較2018」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2018/ch5.htmlより抜粋したものです。

日本のパートタイム労働者の賃金水準はフルタイム労働者の6割ほどしかないというデータが出ています。諸外国に比べても残念ながら低いですね。

では、具体的に、どのような待遇差が問題となりうるのでしょうか。
以下、大前提は「同一の労働に対して」ということになります。

①基本給
基本給の決め方は各社それぞれかと思いますが、労働者の「①能力又は経験に応じて」、「②業績又は成果に応じて」、「③勤続年数に応じて」支給する場合は、①、②、③に応じた部分について、同一であれば同一の支給を求め、一定の違いがあった場合には、その相違に応じた支給を求められます。
いわゆる年齢給は①に応じた部分かと思います。年齢給を採用している会社では、パートの方にも同一の支給が必要になります。

②役職手当等
労働者の役職の内容に対して支給するものについては、正社員と同一の役職に就く短時間労働者・有期雇用労働者には、同一の支給をしなければなりません。

③通勤手当等
短時間労働者・有期雇用労働者にも正社員と同一の支給をしなければなりません。
採用方針にも影響を与えそうですね。

④賞与
会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、正社員と同一の貢献である短時間労働者・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければなりません。また、貢献に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければなりません。
パートさんの賞与は一律〇万円、という支給の仕方ができなくなります。

なんだかちょっと大変なことになりそうですね。
以上のようなことは、厚生労働省のホームページ「同一労働同一賃金特集ページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.htmlのなかで、「同一労働同一賃金ガイドライン」として紹介されています。
「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」に基づいて取り組めば、自分でできるよ、ということなのですが、そもそも「同一の労働に対して」という部分、判断に迷うことも多そうです。
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中小企業診断士 高木 富子

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