最近、収益が大幅に向上している企業様と面談しました。要因は、コロナ以前より取り組んでいた新事業の成果が出てきたためです。経営者は以前より、現在の業務では他社とコスト競争を続けるだけになると危惧し、新たな事業について考えていました。ある日、社内の設備でも対応できると判断し、社員とともに新たな技術の習得に着手しました。失敗を繰り返しながらコツコツと研究を進めていましたが、コロナの影響により、売上高が激減して資金繰りが厳しくなり、金融支援を受けることになりました。しかし、方針を変えることなく、できる範囲で一歩一歩確実に研究を続ける経営者の姿勢に従業員も応え、大手企業でも真似ができない独自の加工技術を習得するに至りました。これにより高付加価値品の受注増加とともに、取引先が増加して収益が向上しました。
一方でなかなか収益確保に至らない企業様とも面談しました。ある小売業者は、コロナ禍では地域住民の来店頻度が上がり一定の利益を確保していました。コロナ後は顧客の行動範囲が広がり来店客数が減少して利益確保ができない状況となっています。また、ある飲食業者では、コロナ禍で人員削減を実施し、コスト削減により何とか赤字を回避していました。現在、お客様の数は増えましたが必要なスタッフ数を確保できず、忙しくなるなかでスタッフが退職してしまい運営が厳しい状況となっています。この2社は経営者自身がしっかりと収支管理をしており、数字が見えるだけに利益確保に向けて、さらにコスト削減を検討しています。
話は変わりますが、バブル末期に就職した私の知人は、大手企業に研究職で採用されましたが、バブル崩壊とともに急遽、営業職に異動を命じられました。収益を重視すれば、いつ成果が出るかわからない多額の研究費用を削減して、売上向上のために営業人材を増加することや余剰人員を削減することも必要な判断と思います。しかし、知人の会社は研究開発費用を削減していたためかはわかりませんが、製品開発でどんどん他社に追い越されています。
中小企業は、コロナのように大きな環境変化があれば、すぐに経営危機となってしまいます。しかし、中小企業は経営者の考えや行動によっては一気に変化することが可能です。また、変化するために必要な人材やノウハウなど隠れた財産もあるはずです。当面の資金繰り維持のために優先的にコスト削減を実行することも必要ですが、今後の成長に不可欠な経費=投資も重視すること、気づいていない社内の財産を見つけ出すことも大切にすべきと思います。
梅村 薫