一般的に経験を積み重ねることで、物事は習熟していきます。例えば仕事や生活におけるトラブルへの対応力や、スポーツなどの競技で様々な対戦相手や環境においても良いパフォーマンスを発揮する力などは、経験が多いほど過去の似た状況から学習してより適切な対応ができると考えられます。
2017年に囲碁の世界で韓国のプロ棋士がAIに敗れたというニュースがありました。一人の人間が一生かかって出来る対戦経験は一日1局として100年かかっても数万局ですが、この時の「AlphaGoZero」というAIは自分自身との対局を数千万局繰り返すことによって状況に応じた最適な手を学び、40日後に人間と対戦し世界最強棋士を破ったといいます。学習のための対局数の圧倒的な多さが的確な判断力に効いていると考えると、経験の積み重ねの重要性を認識させられます。
囲碁やスポーツなどに比べ、不確定要素が多い企業経営における経験の持つ力はより大きいと考えられます。数字や理論も大切ですが様々な状況のおける意思決定の経験から得られる知見が経営においてより重要となるのではないでしょうか。
経験を積み重ねより良い結果を導くためには、以下の3つを考えると良いと思います。
・多くの経験を積み重ねるためにできるだけ早い時期に始める
・多様な経験のために現状維持に拘らず、新しいことへ積極的に挑戦する
・失敗しても成長の糧と捉え、成功するまで諦めない
経験を積むことによって、迅速に的確な判断を下すことができる直観力の向上や、多様な経験に裏付けられた信頼感が得られます。
自身が何か新しいことを始める時には、思い立ったらすぐに始めることでたとえうまく行かなかったとしても失敗の経験により次の成功につながる確率が上がると思います。
また、経営の引継ぎや業務の権限移譲などにおいて、経験不足を理由に前任者から移管が進まない状況が見られる事がありますが、より早い時期の移管が後任者に多くの経験を積ませ人材の育成につながると考えられます。
経験を積み重ねることは、単に知識やスキルを身につけることだけではなく、個人の成長と組織の発展につながる、重要な投資と捉えるべきではないでしょうか。
経営は、日々変化する環境の中で、常に最善の判断を下すことが求められます。経験は、その判断を支える確かな基盤となります。ぜひ、積極的に経験を積み重ね、揺るぎない経営を築いて頂きたいと思います。
中小企業診断士 大石祐貴