先日、テレビで再生医療の特集を見る機会があった。脊椎損傷により手足が動かなくなった患者が、医療チームの支援を通じて自分自身の足で歩き、料理も作り、自立した生活を過ごすまで回復する過程が紹介された。その治療方法だが、患者の骨髄液に0.1%程含まれている間葉系幹細胞を抽出して1億個まで培養し、患者に戻すというものであった。この間葉系幹細胞は傷ついた細胞の入れ替えや失った細胞を補う機能があるそうだ。患者が数か月の間に徐々に手足が動くようになり、リハビリを通じてさらに動作範囲が拡大していく様子を見て、ふと経営改善支援に似ていると感じた。
この再生医療で使用される間葉系幹細胞は、そもそも自分自身の脊髄液の中にある細胞である。経営改善でも、経営者をはじめ社内人材より改善に向けたキーパーソンを見つけ、チームを作り、行動していく。キーパーソンは通常業務を通じて問題を十分認識しているため、キーパーソンが参加することにより経営改善が進みやすくなる。内部にもともとある力を活用する点で再生医療と同じである。そして、目に見えている問題の真因を捉え、それぞれの課題に対してどのように改善行動をとるかを十分に考え、計画にまとめていく過程は、治療の核となる間葉系幹細胞の培養に通じるものがある。
今回紹介された再生医療を進めるには専門の医療チームの存在が不可欠である。そして、経営改善も自社内で解決できない状況になった時は専門家のサポートが必要である。また、治療後に機能改善を進めるためにリハビリをするように、経営改善においても計画策定とともに専門家より実行支援を受けながら改善を進める方が効果的である。
再生医療のような特別な治療が必要になることは少なくても、人が生きていく中で様々な病気を抱える。常日頃から健康に気を付けて体を鍛えることが大切で、鍛えたことにより病気を予防することができる。しかし、医師の診察を受け、治療しなければならない病気になることもある。企業も人と同じ生きもの。自社が事業を継続していくためには、ちょっとした変化にも対応できるよう日頃から経営力を高める取り組みが大切だ。それでも厳しい状況になったときは大病になる前に早めに専門家に相談することを勧めたい。