株式市場の活況がテレビや新聞紙面を連日賑わせています。コロナ禍で多くの人々が苦しむのを横目に、2021年2月15日に日経平均株価終値がバブル期以来30年ぶりとなる3万円を上回りました。振り返ると、新型コロナウイルスの感染拡大で世界同時株安が発生したのは2020年2月下旬のことでした。当時、今のような日経平均株価の急回復を誰が予想できたでしょうか。
日経平均株価の話はさておき、ここからは非上場株式について少し触れてみたいと思います。非上場会社の株式は売買される機会が少ないため、普段は自社の株価を気にしていない中小企業の経営者も多いかと思います。上場株式と異なり、非上場株式は株式を売買するための市場が無く、市場価格も存在しません。そのため、非上場株式を売買する相手は自分で見つけなければなりませんし、売買価格も当事者同士で決める必要があります。
中小企業白書によれば、日本の中小企業の経営者の約6割が60歳以上であり、今後10年程度の間に事業承継のタイミングを迎えます。そこで問題となるのが、自社株の評価額です。自社株の評価方法の詳細は割愛しますが、後継者が自社株の生前贈与を受けたり、相続したりする場合には、贈与税や相続税が課せられます。これまで堅実経営を続けてきた中小企業にとっては、自社株の評価額が高くなれば後継者が高額な納税負担を強いられることになります。そして、後継者が高額の納税資金を準備できず、事業承継に支障が生じる事態にもなりかねません。このように、中小企業の経営者は自社株の評価額が高いことに手放しで喜んではいられません。
後継者への事業承継を円滑に進めるためには事前準備が欠かせませんが、まずは自社株の評価額を知ることが大切です。また、事業承継を円滑に進められるように、国が様々な事業承継支援策を用意しています。株式市場の活況が世間を賑わせていますが、この機に自社の株価にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
中小企業診断士 秋田 秀美