Z世代の起業家の話

先日、ある若手起業家と話をする機会があった。Z世代の彼は話し方や立ち居振る舞いは物腰柔らかく、話す内容のあちらこちらにデジタルネイティブ世代を感じさせるワードが飛び交う。Z世代は、生まれた時からインターネットで繋がる世界が当たり前に存在し、デジタルネイティブでネットリテラシーが高いのが特徴と言われる。彼もネットリテラシーが高いのはもちろんのこと、プログラミング・スキルも並外れている。Z世代の感性と卓越したスキルがあるからこそ、日常生活の中で生まれた問題意識から新しい事業アイデアを思い付き、それを自分のスキルで実現しようと思ったのが起業の始まりだそうだ。
彼がまだ大学生の頃に、講義の合間に事業アイデアを温め、友人と起業について語り合ううちに意気投合し、一緒に会社を設立して新たなビジネスの立ち上げを目指すことになったそうだ。スタートアップ企業らしく、最初は二人で机とPCだけがある小さな部屋に籠りながら、製品開発に向けてプログラミングに毎日明け暮れたという。
 彼と話をしていて最も感心させられるのは、プログラミングなどの技術的な知識の深さだけでなく、経営管理、マーケティング、資金調達などスタートアップ企業の経営に関する専門知識が頭の中にしっかりと叩き込まれていることだった。これについて、彼曰く、若手起業家を育成する官民の支援プログラムが充実しており、起業家向け研修プログラムを受講し、メンターやエンジェル投資家から助言や手厚いサポートを受けることができたからだそうだ。
日本政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を決定し、①人材・ネットワークの構築、②資金供給の強化と出口戦略の多様化、③オープンイノベーションの推進、の3本柱を推進している。将来的に日本をアジア最大のスタートアップハブに成長させるのが政府の目標であり、この流れを受けて日本でもスタートアップ投資がさらに活発になることが期待される。
彼の話に戻すと、会社を設立してすぐのシード段階でエンジェル投資家から開発資金を調達できたそうだ。それから1年ほどで製品開発が完了し、プロダクトローンチにこぎつけることが出来たという。これから先はどうなるかわからないが、上手く進めば数年後にエグジットを目指したいそうだ。彼のこれからの飛躍を陰ながら楽しみにしている。

中小企業診断士 秋田 秀美

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