皆さまは、会計という言葉に対して、どのようなイメージを持たれるでしょうか?
会計を大きく二つに分けると、「制度会計」と「管理会計」があります。
前者の「制度会計」は会社の外部にいる利害関係者に報告するため、一定のルールに基づいて作成されます。この「制度会計」は、株主や投資家向けの報告を目的とする「財務会計」と、税金の申告を目的とする「税務会計」に分けることができます。
中小企業の場合、「制度会計」は「税務会計」を意識して作ることが多いかと思います。
後者の「管理会計」は社内の意思決定に活かすために作成されます。「制度会計」は制度に縛られますが、「管理会計」は会社で自由に活用すればよいのです。
それでは、部門別損益や予算を作成すれば、「管理会計」として問題はないのでしょうか。
実は、部門別損益や予算を作成しているだけでは、あまり効果はありません。意思決定に役立てる仕組みと意識を持って、会社の将来に役立ててこそ、「管理会計」の意味があるのです。
・どの部門の利益が高く、何に、どのように注力していくのか。
・どの部門の利益が悪く、何に、どのような対策を講じるのか。
「管理会計」は、「コスト管理」、「業績評価」、「意思決定」に活用されるのです。
事前に計画(P)を立て、実行(D)し、チェック(C)して、改善(A)する必要があります。このように、「PDCAサイクル」を回して、どんどん継続的に改善していくことが求められているのです。
話は変わりますが、ある会社から相談された時のお話です。
「金融機関に毎月提出している管理表では利益が出ているのに、決算を行うと赤字になってしまう。なぜでしょうか?」
その会社は個別原価管理を行っており、受注ごとにしっかり利益を管理していました。
ところが、その会社のコスト計算は、「材料費」・「労務費」・「製造経費」のみを見て、利益が出ていると判断していました。そして、この金額をベースに見積金額を算出し、得意先から受注していました。
実際には「販売費および一般管理費」や「支払利息」も支払わなければなりません。管理表では想定していない経費があったため、決算を行うと赤字になっていたのです。
そもそも、月次試算表が機能していれば、もっと早く誤りに気づけたでしょう。
こちらは、「管理会計」の「コスト管理」において、誤って使用した事例です。「販売費および一般管理費」等の支払いも考慮して、適切な見積金額を提示する必要がありました。
幸いなことに、適正金額で得意先にお願いすることはできるとのことでした。単に、儲かっていると勘違いしていたから、コスト割れの受注を繰り返していたのです。
なぜ、このようなことが起こってしまったのでしょうか。
会計システムを導入した後、ベテランの経理担当者が退職してしまったとのことでした。データの入力は同じようにしていたのですが、管理表の活かし方を誤ってしまったのです。
あなたの会社の「管理会計」の活用状況はいかがでしょうか。
「管理会計」は自由にアレンジすることができますが、誤った使い方をしていると、誤った意思決定をしてしまいます。「管理会計」の考え方として筋道が通っているのか、活用方法を確認してみてはいかがでしょうか。
中小企業診断士 西田学