耕作放棄地について考える

今年は記録的な猛暑の影響で農作物の収穫にも大きな影響が出ているそうです。私は家庭菜園用の小さな畑を所有しているのですが、猛暑も雑草には関係無いようです。今年は猛暑で屋外での作業を控えたこともあり、しばらく放置した畑には雑草が伸び放題でした。毎年のことですが、雑草の手入れには本当に頭を悩まされます。

ところで、最近、あちこちで管理されなくなった耕作放棄地に雑草が生い茂っているのをよく見かけます。これから日本の人口減少や地方の過疎化が進むと、耕作放棄地がさらに増えるのかと思うと何となく寂しい気分になります。そんな折に、耕作放棄地を活用して新たな事業を始めたいという人にお会いしました。最近増えている耕作放棄地を活用して新たな事業に取り組み、地方の活性化に貢献したいという素晴らしい志をお聞きして感心しました。

耕作放棄地が増える原因は様々ですが、とりわけ農家の高齢化・後継者不在により離農するケースが増えているようです。耕作放棄地の問題は、個別の農家の問題だけにとどまらず、地域の経済や治安、生態系などにも影響を及ぼすため、地域にとって深刻な問題と言えます。
耕作放棄地の問題の解決策のひとつとして、農業の魅力を高めて農業従事者を増やすことが挙げられます。例えば、農家が生産物の付加価値を高めることにより、農家の所得を増やし、儲かる農業へと変えていければ、新たな農業の担い手も増えるでしょう。

そこで思いつくのは農業の6次産業化でしょう。私は農業の6次産業化に詳しいわけではないので、その現状を知るため農林水産省のホームページを覗いてみたところ、6次産業化に関する多くの事例が掲載されており、とても参考になりました。ちなみに、農業の6次産業化は、1次産業を担う農林漁業者が、2次産業である「加工」や3次産業である「販売・サービス」を手掛け、生産物の付加価値を高めることにより所得を向上する取り組みを意味します。

農林水産省のHPに掲載された成功事例を見ていると、6次産業化には農家、加工業者、流通業者、地方自治体などとの連携や協力が成功の秘訣のようです。また、耕作放棄地の所有者や地元農家が協力して、新たな法人を設立するケースも増えており、農業の規模を拡大し、農業用機械などの設備稼働率を上げることで、生産性を向上させたケースもあるようです。さらには、ロボット、ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)などの先端技術を活用したスマート農業を採用することで、農業の省力化や生産性向上などを進める取り組みも進んでいます。

その一方で、農業の6次産業化で事業が軌道に乗らず失敗する事例も多いようで、その代表例が「3J1D」だそうです。「3J1D」とは、「ジャム」、「ジュース」、「ジェラート」、「ドレッシング」の頭文字をとった総称です(「ジェラート」の頭文字は正しくはGです)。農業の6次産業化と聞いてすぐに思いつくのが「ジャム」や「ドレッシング」などへの加工でしたので、これには少し驚きました。「3J1D」の失敗事例が多い理由は、市場に流通している類似商品が多く、競争が激しくて想定ほど売上が伸びないケースが多いのだそうです。

いずれにしても、耕作放棄地の問題の解決には、農業の在り方を変えていく必要があるようです。すなわち、農業の高付加価値化、最新技術の導入による農業の効率化、農地の集約化、農業への若者の参加促進などの取り組みが広がることが期待されます。今回、耕作放棄地の問題解決に取り組みたいという人にお会いして、改めて耕作放棄地の問題や農業の6次産業化について考えた次第です。
 

中小企業診断士 秋田 秀美

関連記事

コメントは利用できません。