個人的にかなり熱中した昨年のNHK大河ドラマに登場した平等院鳳凰堂で、修復作業中に鉄製の金メッ

キ装飾金具が発見されたニュースが丁度ドラマ放送期間中でもあり気になった。
現代でも鉄素材に金メッキは不可能で、銅に金メッキなら可能である。鉄に銅メッキは可能なことから鉄+銅+金の三層構造ならいけるかもとやってみたら駄目だった、という話で千年前のメッキ職人はどうやってこの技術を開発したか…だったと記憶している。
かつて会社員だったころ、誰もが知る巨大自動車メーカー向けに生産ラインの設備営業をしていたが、自動車の組立工場に入荷したシートやインナーパネルやシールドなど、大型異形部品を生産ラインの当該組立地点まで高速搬送するモノレール搬送機、の受電部品が異様に売れていたことが当時気になっていた。モノレール搬送機は電源を持たないモーター駆動のため、軌道上に敷設したV溝加工の給電線に、厚さ2~3ミリ台形状のカーボンを押付けてパンタグラフの如く走行しながら受電する。一般にトロリー給電と呼ばれ、この受電部品は「スライドシュー」という製品名で、消耗部品として異様に売れていたのである。
当時、勤務先製のモノレール搬送機は価格競争で敗退し、ライバル他社のものに順次置き換わっていった。営業担当として忸怩たる思いだったが何故かスライドシューだけは売れ続けていたのである。どうやら客先自動車メーカーの保全部署が、ライバル他社のモノレール搬送機にもスライドシューが使えることに気づいたようである。
ライバル他社の受電部品は誰もが知る大手電機メーカー標準品で価格は@1万円だった。
台形カーボンをコの字型のネジ穴付金具で挟み込んで、ハーネス丸端子とボルト共締め構造だった。
一方、当時の勤務先のスライドシューは台形カーボンにアルミメッキを施し、ハーネス端をアルミ面へ直接はんだ付けした構造で@5千円弱だった。スライドシューはこの複雑形状なコの字型金具不要な単純構造なので価格競争力ありと思っていたが、それは大間違いでアルミメッキはタダではない。案の定、その家族経営のメッキ屋が突如廃業して勤務先社内が大騒ぎになった。
通常メーカーでは、仕入先の事業承継の困難性に気づくと、新たな仕入先を探索始めるがカーボン材にアルミメッキできるメッキ屋を探しまくっても見つからなかったのである。
結局、客先自動車メーカーには謝り倒して高額な大手電機メーカー製に切り替えて頂いたが、
今の我々の知見なら、そのような希少技術を保有する企業には必ず価値ありと分析し、企業再生支援、又はM&Aの成立ができたはずである。
千年後、巨大自動車工場跡からアルミメッキされた朽ちた台形カーボンが発掘されてテレビ番組で特集されることを密かに願っている。