ルールは世につれ

どちらかというと飽きっぽい自分にとって、それなりに続いている趣味のひとつにクルマいじりがある。ただ、見栄えを良くしよう、速く走れるようにしようといった「弄り」の時期もあったが、走行距離もそろそろ20万キロに届こうという現在では、絶えず朽ちて自然に還ろうとする車体を無理やり延命する、いわば「維持り」の意味が大きい。

そんな愛車への愛情表現と若干の経済的理由により、2年に1度の車検はユーザー車検で通すようにしている。念のために付記すると、ユーザー車検とは自動車の使用者が自ら運輸支局等に車両を持ち込んで車検を受けることである。法律上はこちらが正しい行為らしいのだが、一部の物好きを除く大多数にとってはディーラーや整備工場に対価を払って委託することが常識となっている。

さて、かように重要なイベントを先月末に2年ぶりに迎えたのだが、結果から言うと大変な目にあった。大まかな流れは、事前に24ヶ月定期点検整備を実施し、車検には要らない(?)部品を外すといったいつもの作業をこなしたのち、検査場にクルマで乗り込み、自動の検査装置が連続して並んでいる検査ラインへ入り、ひととおりの検査に全て合格すれば一丁上がりである。…ハズなのだが、その検査ラインに入る前の外観検査で検査員が「あぁ~~…」と困ったような声を上げた。実際に困ることになるのはこちらなのだが、メーターパネルにある警告灯のひとつが点灯しているため検査自体を受けられないと申し訳なさそうに言う。

いや、私も警告灯が点灯していることは承知しており(もちろん褒められたことではないのも承知している)、過去の車検もその状態で通ってきている。いったいどういうことなのか…。謎はすぐに解けた。単に私が法改正について知らなかったのだった。そしてこれは今年の2月、つまりほんの2か月前に追加された項目だとのことだから間が悪い。

ちょうど先日、企業や消費者の契約ルールを定める改正民法が参院本会議で可決、成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直し、インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視したとのこと。常に変わりゆくこの社会では、ルールも変わってゆく。逆にルールが変わることで社会が変わることもある。時に齟齬が生じることはあっても、基本的にルールとはその社会を映す鏡である。上記の警告灯の例では、安全に対する社会的機運の高まりから厳密にチェックすることになったというが、知らなかったために被る不利益については、当たり前だが「知らなかったじゃ済まされない」と反省した出来事だった。

ちなみに愛車はその後きちんと整備しなおし、検査場に通うこと3回目にして無事車検に合格した。

中小企業診断士 大越 峡士郎

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