このところ「人が足りない」「採用してもすぐに辞めてしまう」との声を多く聞きます。
労働者人口が減少するなか、大企業が積極的に人材確保に動き出したため、知名度の低い中小企業は人材を確保することが一層難しくなっています。そうした状況から、外国人の研修生を積極的に受け入れている中小企業が増えています。短期的な視点で見れば人材を確保でき、売上増加につながるメリットはありますが、外国人研修生は就労期間が限られています。中小企業にとって専門性の高い技能を持つ人材は重要な経営資産です。一時的なマンパワー確保のための外国人研修生の採用は自社の経営資産にはなりません。
また、人材確保だけでなく従業員の定着も課題となっています。新規採用者が定着しない中小企業では、研修制度が整備されていないケースが散見されます。人材不足の中小企業の多くは職場環境や担当業務に慣れる間もなく、採用早々からベテラン従業員と同様の業務を任せてしまいがちです。研修期間や研修制度がないと、忙しい先輩たちとなかなかコミュニケーションも図りにくく職場になじむことができません。また、新規採用者の定着率が悪いと、既存の従業員に不安を与えます。新しい人材が確保されるまで業務負担が増えて職場の雰囲気も悪くなり、定着どころか離職率を高める要因にもなります。
人材確保が厳しい状況下で、担当者任せで採用試験をしていたり、「辞めたのはその人たちの方に問題があったから」と考えているようでは、いつまでたっても人材の確保・定着は進みません。社長が積極的に採用機会の場に参加し、目の前にいる採用予定者に自分の考えを伝え、採用後は社長自らが育てていくことが最良の方法と考えます。育てることはとても労力のかかる大変な作業ですが、自社に魅力を感じて入社してくれた人材です。その思いに応えるためにも時間をかけて根気よく育てていけば、できることが間違いなく広がっていきます。
欲しい人材は待っていてもやって来ません。自分たちでしっかりと教育することで教える側、教わる側ともに自社に対する帰属意識、貢献意欲も高まり、さらには優秀な人材も集まりやすい組織に変わるのではないでしょうか。
人材不足や定着で悩んでいる社長さん、ところでいま会社を支えている社員の名前を、全員言えますか?
中小企業診断士 梅村 薫