値上げの夏、会社を守るための選択

最近、妻と買い物に行くたびに、色々な物が値上がりしているのを実感します。例えば、スーパーでの買い物では、野菜や果物の価格が急騰していることに驚かされます。今年の夏は特にコメ不足が深刻で昨年の酷暑による収穫量の減少で店頭からお米が無くなっています。価格も軒並み上昇し昨年の4割から5割高く販売されているものもあり、おにぎりや米菓などの関連商品も上昇しています。
光熱費の高騰も無視できません。今年の電気代は補助金の縮小により、家庭の負担は増加します。この夏は酷暑が続きエアコンの使用が増え電気代の負担増により家計が圧迫されています。このように、生活費の高騰は私たちの家計に直接的な影響を与えています。

 仕事上でも値上げに関する相談が増えています。原材料、光熱費の高騰、人件費の上昇など、中小企業は様々な価格上昇圧力に直面しています。
日本は長年デフレ経済に苦しんで来ました。中小企業は親企業からのコストダウン要求に応えるため地道なコスト削減を進め、少しでも利益を確保しようと努力してきましたが、コロナ禍による売上減少、借入増加で大きな打撃を受けています。更に円安に起因するインフレ、光熱費の高騰、原材料費の上昇などにより、一層の苦境に立たされています。
相談内容で多いのは、コロナ禍で売上が減少し2期、3期と赤字が続き、自社の原価の実力を知りたい、値上げ申請をしたいが何をしたら良いか分からない、客先との値上げ交渉をどの様にすれば良いかなど、原価の把握、値上げの交渉方法に関する相談です。
値上げに関しては、どの社長もネガティブでそもそも客先に値上げ申請に行くのが怖い、
値上げしたら他社に転注されるのではないかと言う恐怖で申請をためらわれている社長が多いです。

値上げ交渉の現状について中小企業庁のレポートによると、業界によって異なりますが自動車業界では値上げ交渉の申し入れは70%程度の事業者が行っており、価格転嫁については約45%程度に留まっています。
昨年3月に公正取引員会が価格転嫁に応じていない企業13社を公表したことを契機に、親企業の姿勢に柔軟な対応が見られるようになりましたが、価格転嫁については依然として厳しい状況が続いています。

物価の上昇は、私たちの生活や企業経営に大きな影響を与えています。日常生活では、食品や光熱費の高騰が家計を圧迫し、企業はコスト上昇に対する対応を迫られています。このような状況下で、企業は経営が悪化する前に客先に相談し、適切な値上げ交渉を行うことと持続可能な企業経営を模索する必要があります。
この逆境は、単なる試練ではなく、より強固な体質を築くための機会でもあります。社会全体での理解と協力のもと、この難局を乗り越えて行く必要があります。私たち一人一人の賢明な行動が未来の安定した企業経営に繋がっていきます。

                            中小企業診断士 清水英範

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