先日、スイスのビジネススクールの国際経営開発研究所(IMD)より2024年の世界競争力ランキングが発表され、日本は38位と3年連続で過去最低を更新しました。企業の生産性や効率の低さなどが低評価の主な理由となっています。特に「ビジネスの効率性」の評価が低く、また分野別で起業環境や国際経験、機敏性などは最下位となっています。一方で評価が高い点としては、国内経済が5 位、雇用が6 位、科学的インフラが10 位となっています。中小企業では生産性の向上は重要な課題であり、補助金申請でも生産性向上の目標値が要件として設定されています。
生産性向上が課題の昨今、訪問先の中小企業経営者より伺う問題として「人材不足」、「物価高騰」が共通しています。「売上高は回復傾向にある。人手不足を解消するために求人募集しているが、なかなか問い合わせがない」と、業種に関係なく大半の経営者から伺います。また、「売上は昨年度より伸びているが、資材価格やエネルギー価格の高騰により、利益確保が厳しい(赤字となっている)」との声も多いです。
物価高騰については、お客様に資材等の高騰分を反映した適正な価格で購入いただくことが効果的な対策ですが、なかなか価格を上げられないのが中小企業の現状です。製造業であれば、単価アップ交渉により受注量が減少する恐れ、他社へ切り替えられる恐れがありお願いしにくい、小売業であれば顧客の足が減るのが怖いと話す経営者が多いです。
人手不足では少子高齢化が進展するなか、新卒者等は大手企業等に採用されてしまいます。従業員の高齢化も問題となっている中小企業は今後さらに厳しい状況になると思います。もともと中小企業では資金余力がないこともあり、決算書を見ても老朽化した設備が多く、従業員数に対する設備資産の比率(労働装備率)は低いです。十分な設備投資ができない点は、人手数やベテランのノウハウで補完してきた傾向があります。最新設備の導入、IT化推進が必要であることをわかっていても、中小企業にとって改善の1歩目としてはハードルが高いと思われます。
現状のままでは収益改善や生産性向上の実現はできません。前述のランキングでは機敏性が低いと評価されていますが、そもそも中小企業の強みは「意思決定から実行までが早い」、「経営の柔軟性が高い」などと言われています。コロナ後の支援を通じて、既存の事業形態・プロセスを見直し、変化が必要な時代になったと感じます。自社の強みをしっかり把握すること、顧客の要望や同業・異業種の動向を知ることで、今後の事業の在り方を変えていくことが必要です。
実際、コロナ禍の危機感から人員配置の変更、事業プロセスの見直し、他社との連携などコツコツできることから取り組んだ結果、着実に成長している中小企業様もいらっしゃいます。まずは経営者として、今後どう在りたいかを考え、できることから行動することです。しかし、自分の考えを明確にまとめるのは難しいです。そんな時はNBRを思い出して、相談してください。
梅村 薫