マーケティング 今昔

夏休みの恒例行事として子供の読書感想文があります。子供たちがどんな話を読んでどう思ったのかを知っておくために、彼らが選んだ本には目を通すのですが、今回、本のテーマとは違う視点で心に残ったことがありました。単なる私の歴史認識不足なので、当たり前の方にとっては当たり前の話かもしれませんが、私が目からうろこだったのは次の一文です。

「江戸には六百五十軒あまりの貸本屋があり、貸本業はなかなかの繁盛ぶりでした」

恥ずかしながら、これまでの私にとって江戸時代というのは、歴史の中の一時代であって「今とは全く違う生活をしていた人々が生きていた時代」という認識だったのです。

江戸時代の人々が、お金を払って、本を借りに行って、農作業や仕事の合間に本を読んだ。という事実。人気のある作品が生まれて、クチコミやらなにやらで本が売れて、商売のうまい人がいて、グッズが販売されて、人気の作家が出てきて、マネをする人、弟子入りする人が出てきて市場が広がっていく。歴史で習った『東海道中膝栗毛』もそんな人気の小説の1つで、この本を読んだ人々がそんな旅にあこがれて実際に旅に出る人がいて、旅行ブームが生まれていた、そしてそこからまた新しい商売が生まれてくる。最近仕事で新幹線を利用すると必ず出会う旅のスタイルがあります。若い女性が、いわゆる「推し」グッズとともにプラットホームの「名古屋駅」の看板と自撮りをしているのです。現代の『推し旅』も、江戸時代のお伊勢参り等からの流れをくむものかもしれないと思うと、とても興味深いなと思います。

 考えてみれば、明治維新から154年、たかだか150年で人の本質がそんなに変わる訳がないのですが(江戸時代というと初めのころのイメージが強くて…。とはいえ江戸時代の初めでも400年前、やはり本質的には変わっていないのかもしれません)、今の市場の拡がりかた、マーケティングとあまりに変わらない状況があったことに衝撃を受けました。

技術やツールの進歩、進化は目まぐるしいものがあります。生活様式の面では、今江戸時代の生活に戻れと言われたらなかなかに厳しいものがありますが、「欲しい」と思う人がいて、「届けたい」と思う人がいて、「広めたい」と思う人がいて、「人気商品」ができて、「儲ける」人がいるという構造が全く変わっていないことは、今も昔もマーケティングの基本は変わらないという驚きと、改めて基本に返ることの大切さを感じた次第です。

 現代の流行りのマーケティングツールといえば、SNSと動画活用ということになるのでしょうが、その活用において基本となるマーケティングの考え方は、今も昔も「誰に」「何を」「どのように」の視点を持って取り組むことだと言えそうです。

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