昨今、技術の変革によりリスキリングが推奨されています。リスキリングとは、経産省の公開資料によると
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
と定義されており、主にDX(デジタルトランスフォーメーション)に伴うスキルの学び直しを差しているようです。背景にはデータサイエンスを活用するなどの新しい職業やデジタル化により仕事内容が大幅に変わる職業に就くためにスキル習得が求められていることがあります。アマゾンなどの大企業のリスキリングが話題になっており、DXを進めることで業務の効率化や差別化を図り組織の競争力を高めることが必要とされています。
リスキリングはデジタル化により変革する市場環境において企業の競争力確保や、個人のキャリア形成において重要であると思いますが、企業の競争力確保の観点から、特に中小企業で組織のスキルの底上げを図るためには経営者自らが率先して、DXに限らず変化に伴い必要となるスキルや手法を学び直すことが重要と考えています。
経営者が事業に必要なスキルを積極的に学び、新しい技術や経営手法を経営に取入れることで組織は活性化し成長の可能性は増します。また組織を引っ張るリーダーのスキルが高いとメンバーのスキルも上がりやすくなります。リーダーのスキルが高くない組織には、優秀なメンバーは定着しにくいと考えられます。成長意欲の高い人材は学ぶことに積極的であり、より多くの事が学べる優秀なリーダーの基で仕事をすることを好みますし、メンバーがリーダー以上にスキルが高いと組織運営に無理が生じて関係が長続きしません。したがって、リーダーの能力向上なしにメンバーが成長し組織が発展することは起こりにくいと考えるとリーダーの学び直しは組織の発展には必要不可欠です。
企業にとって人は最も重要な経営資源です。特に中小企業では優秀な人材が潤沢にいるわけではないため、一人ひとりのスキルの底上げが差別化の源泉になります。日本の年代別人口構成を考えると今後労働人口は減少することは確実であり、ますます個々人のスキル向上が重要となります。そのためにも経営者が率先して、学び直しをすることが必要ではないでしょうか。
中小企業診断士 大石祐貴