御社の技術を次世代につないでいくには

中小企業診断士の仕事をしていると、多くの企業に訪問する機会があります。私の場合、製造業の小規模事業者が多いのですが、創業社長と話していると、技術のことをイキイキと話をされていることが何度もありました。しかも、創業社長は、生産現場で自ら技術を磨いて、営業先にその技術を認めてもらい、長年にわたり良好な関係を維持してきました。

そもそも、創業社長が生産現場と営業が苦手で番頭にも恵まれなかったら、今日まで会社を維持できなかったかもしれません。生産現場と営業を創業社長がリードして、たくさんの修羅場を乗り越えてきたからこそ、現在に至ると考えることもできます。

ところが、後継者は、少し状況が異なります。現社長が後継者育成に熱心で、後継者に生産現場・営業・経営(マネジメント)の経験を順番に積ませている会社は良いのですが、残念ながら一部門しか経験していない後継者もいます。そうなると、生産現場だけが得意な後継者、営業だけが得意な後継者、マネジメントだけが得意な後継者が一定数生れてしまいます。

事業環境が厳しくなる中、すべての分野で結果を出すことは難しくなっています。生産現場や営業のことは従業員に任せて、後継者は意思決定に専念することも可能ではあります。しかし、生産現場や営業の経験が不足していると、従業員に足元を見られてしまいます。

業務の理解不足で新社長(後継者)が的確な指示を出せないでいると、従業員のコントロールは難しくなります。従業員の番頭に認めてもらうためには、自ら汗水流して行動し、プレッシャーにも打ち勝ち、二刀流・三刀流の活躍がある程度必要かと思われます。

日本国内に304万者(2016年)の小規模事業者があります。果たして、このような多くの事業者で、無事に後継者を育成することは可能なのでしょうか。

製造業は生産性向上を常に求められていますが、一定の従業者数がいて、最低限の事業規模がないと、継続的に改善することに限界があると、私は感じています。

一層のこと、M&Aで会社の規模を大きくして、一体化した会社の新役員間で、役割を分担することを検討してみてはいかがでしょうか。技術が得意な役員、営業が得意な役員、マネジメントが得意な役員で役割を分担することも一つの方法です。

M&Aの前提として、統合する会社間でシナジー(相乗効果)を発揮できることが必要です。M&Aにおいては、1+1=2ではなく、1+1=3となる組合せが必要なのです。お互いの強みを伸ばし、弱みを補う相手探しが、従業員を守りつつ御社の技術を守る一つの方法かもしれません。

中小企業診断士 西田学

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