「相手の気持ちをよく考える」というよく耳にする言葉が最近非常に難しいのではないかと考えるようになった。その理由は、相手の立場によっては同じ状況においても考えることが全く違うのではないかと気づいたことにある。
具体的には、私たちは業績もよく、今から企業規模も売上高も大きく飛躍するために成長しようとする企業をお手伝いすることもあれば、借入の返済もままならず、明日からどのようにして金策を講じるか、といった企業もお手伝いすることもある。現在の国内経済の動き、円安や物価高の局面というものはいずれの企業も国内で活動する上では変わりがない。しかし、それぞれの状況によって相手がどう考えるか、というものは慎重に考えなけばならない。さらに言えば、支援先の経営者の考え方や企業文化、商習慣などによりそれも様々に異なってくる。そういった中で冒頭のように気軽に「相手の気持ちをよく考える」ということが難しいのでは。と考えるようになった。
そういったことを考え始めた最近は、「具体的にする」ということを意識している。詳しく言えば、あいまいな質問やクローズドクエスチョン(YES.NOで答えることができる質問)を避け、相手が質問の意図を把握することができるようにする。ということである。
こういったことを繰り返していると、ヒアリングの中で相手の表情が明るくなったり、はっとした表情をするといった経験が多くなったりと、相手の気持ちを察することができたのかな。と感じやりがい得る瞬間が少しずつ増えてきたような気がする。反面、冗長的になってしまうことも多くなり、「質問の意味が分からない」といわれたり、「もう一回」といわれてたりしてしまうこともある。もちろん、言葉遣いや選ぶ言葉も意識している。
こういったように「相手の置かれた立場(状況)を理解」し、「具体的にする」ことを意識して実践することで「相手の気持ちをよく考える」ことにつながっているのではないかと思うようになった。各種支援機関の職員や同業者など、企業支援に携わる立場で働く人と支援現場で同席するが、こちらの都合や自分の考えを一方的に話す場面に遭遇したことも少なくない。当の本人はそれでも「相手のことを思っていってるんです」という感じである。もちろん、その是非は相手(相談者)にしかわからないことであるものの、「相手の気持ちをよく考える」ということは気軽に使われている以上に難しいことなんだと実感する今日この頃である。
東野 礼