少し前になりますが、 経営者保証に関するガイドライン(以下、経営者保証ガイドライン)が平成26年2月1日から適用が開始されました背景としては、日本政府による経済活性化策(日本再興戦略)に基づいたものであり、企業の競争力向上と中小企業・小規模事業者の活性化を促すことにあります。具体的には、「原則保証・担保による債権保全」を前提とした金融機関の融資スタンスを、経営者保証に依存しない融資の一層の促進を図るものです。
中小企業庁HPでの経営者保証ガイドライン概要では、経営者の個人保証について
(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることで、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生等を応援する、とあります。
(第三者保証人についても、上記(2),(3)については経営者本人と同様の取扱)
中小企業の場合は、株主=経営者ということがほとんどであり、社長が自社の借入を行うにあたっては相応の責任を負うべきであるともいえます。しかし、経営者保証を行っている中小企業のうち約7割が、経営者個人の資産と同じくらい、または個人資産を上回る保証を行っており、かなりの負担があることも事実です。こうした中小企業の物心両面での負担軽減効果があります。
半面、金融機関にとって、経営者保証は、ガバナンス不足や財務基盤が脆弱な中小企業の信用補完の役割を果たしてきました。そうした状況も考慮し、経営者保証ガイドラインでは、企業は金融機関に対して、先の企業と経営者の明確な区分・分離の他に、財務状況の把握や情報開示などの透明性の確保を示唆しています。たとえば、経営者保証債務履行請求時において、表明保証した内容と相違がある場合は、「従前の」融資慣行に基づく保証債務の復活があります。
基本的には、良質な財務状況や営業成績などによって、保証に変わる信用補完を行うことが前提であり、また金融機関とは常日頃からの情報開示などによる関係性を構築することが重要です。経営者保証ガイドラインはそうした健全な経営活動を通して、成長戦略を描く中小企業の後押しをするものだということを念頭に置く必要があります。
中小企業診断士 安田健一