事業デューデリジェンス(事業DD)の重要性

事業再生を進める際に金融機関から事業の実態を調査する、事業デューデリジェンス(以下、事業DDという。)を依頼されることがあります。今回は、事業再生の場面における事業DDの重要性と、なぜそれを中小企業診断士に依頼するのかについて考えてみます。

事業再生の流れは、①デューデリジェンス(主に事業DD、財務DD)、②経営改善計画の策定、③実行支援・モニタリング、の3つの段階に分かれます。この中で事業再生の成否が分かれるポイントはデューデリジェンスにあります。企業の現状を正確に把握しなければ、真の窮境原因を特定することができず、改善の方向を見誤ってしまいます。その結果策定した経営改善計画は実態に沿ったものではなく、成果も伴いません。そうなれば、再生の見込みはないといっても過言ではありません。本来であれば、どんな企業でも再生可能な要素(企業の強みなど)が必ずあると考えられます。その要素を見出し、窮境状態を脱する突破口とするためにもデューデリジェンスは重要であるといえます。

一方、金融機関がなぜ事業DDを中小企業診断士等の外部専門家に依頼するのかという視点で考えてみます。金融機関には財務を見る目はありますが、事業面についてはどうでしょうか?債権者として債務者の事業性を最も熟知しておきたいところですが、現実には、実態を深く掴むことができていないことを金融機関も認めています。そのために経営分析のプロフェッショナルである中小企業診断士に依頼されるわけです。

事業DDは事業性を評価するもので、会社が本来持っている収益性を調査します。最大のポイントは、「ビジネスモデルを整理」し、そこから「窮境原因の特定」と「改善の基本方向を探索」することです。窮境原因が取り除かれ、経営課題を解決していけば事業として再生するのかどうかを見極め、経営改善計画としてまとめていきます。

実際には、①会社の基本情報収集、②SWOTなど環境分析(外部環境・内部環境)、③ビジネスモデル俯瞰図の作成、④改善の方向性を出す、ことなどを事業DDとして行います。

今回は具体論には言及しませんが、事業DDの重要性と基本的な考え方について考えてみました。

最後に、事業再生に関わる中小企業診断士は、金融機関また支援企業の期待に応えていかなければなりません。そのためには必ず磨いておきたいスキルであると考えます。

中小企業診断士 小竹 繁夫

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