その改善策にリスクはありませんか?

経営改善、事業再生を行う場合、自社の強みを生かした売上拡大策だけではなく、費用の削減を行うことが必須となります。
固定費の内訳は各企業により多少異なりますが、法定福利費(社会保険料、労働保険料等)を含む人件費の比率は、固定費の中でも高いと言えるでしょう。
その場合、人件費の削減が経営改善の大きなカギを握ることになりますが、どのように行ったら良いでしょうか?

ここで例え話を入れた方が、分かりやすいと思いますので、一つのケースを挙げてみます(このケースはあくまで架空です)

企業概要
製造業で30人規模、以前、パートを含めリストラを行った。社長はその時の影響で労働法の知識は付けたものの、トラウマにもなっている。人員減のせいで残業が多く人件費も膨らんできている。賃金が低いせいか従業員が集まらない。社長「改善策は徐々には効果が上がっているが、金融機関への返済を考えると利益が足らない。リストラが必要かもしれないが、解雇による従業員とのドロドロ劇はもうコリゴリだ。社会保険料だけでも下げたいが、労働時間を少なくして、社会保険を外したら、納期が間に合わない。どうしたら・・・。」そこに外注先が納品に来て、社長はひらめいた!
社長「そうだ、従業員もわが社の外注になってもらえばいい。業務委託契約を結べば、社員じゃないから社会保険料もいらないし、残業、賞与も不要だ。その分少し給料を上げてあげれば、労使共ウィン&ウィンだ!」

業務委託して成立するためには、主に次の要件が必要です。
・受託者において受託可能な仕事分だけ受注できる体制か?
・業務の遂行方法を受託者が決める事ができるか?
・生産設備等を受託者が負担しているか(費用等)
・勤務場所や勤務時間が自由か? 等
上記の要件で考えると、IT企業やフルコミッションの保険会社だとすると、「業務委託」として行える可能性はあるとは思います。
しかし、製造業と考えると、生産設備を借りる必要がありますし、指示系統や勤務時間、勤務場所等の拘束性から考えても実現性はかなり厳しくなります。上記のケースでは、業務委託の成立が疑問視される事から、社長の意に反して偽装請負と判断される事が有り得ます。そうなると監督署等から是正の指摘がされますし、従業員からも、業務委託でないので割増賃金や、慰謝料等の請求等、社長がコリゴリと思っていた労使紛争の中に巻き込まれる可能性も否定できません。

改善策に関してリスクを低減するには、多様な目を持つ事が重要です。上記のケースは単純でしたが、法的な面、会計的な面等、配慮しなければならない視点は多岐に渡ります。外部コンサルに改善案を委託しても、単一の士業ではその士業だけの視点に留まり、改善案に潜むリスクを発見ができない可能性はあります。やはり経験を積んだ、多様な専門家が在籍するコンサルに委託する方がベターだと思われます。

社会保険労務士・中小企業診断士 加賀文人

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