事業資金の公私混同

369032先日、ある企業で、会社の資金繰りの話をしている時に、同席していた債権者から、「会社と個人の財布を分けて下さい。」という話が出ました。よく聞いてみると、この企業は、インターネットで資材を仕入れる際に個人使用の商品も合わせて会社のお金で購入したり、社長への役員報酬を計上はしても実際には支払わず、一方、会社のお金から役員の個人ローンの返済をしたりしているとのことでした。

そこに至った経緯は、売り上げ低迷により会社の資金繰りが厳しく、社長も個人資産のローン返済に困窮しており、結果的に両者の資金繰りを混同して、事業資金で対応するようになったということでした。このような行為を積み重ねていると、事業活動による資金の動きや、会社の財務状態が、正確に分からなくなります。

債権者の意図は、事業収支や財務状況が不透明であるため、債務履行の目途が立てにくいので、その原因となる問題を解消してほしいということでした。正確な収益や財務状態が分からない企業に対しては、われわれ専門家や金融機関も支援の手をさしのべにくく、企業は窮境に陥っても、外部の支援が受けにくくなります。

財務の透明性を確保するためには、個人と会社の財布は分離するべきです。そして、会社が個人のお金を立て替える、または会社が個人からお金を借りるなどした場合は、適切な会計処理を行うことが必要です。その上で、資金繰り表による資金管理を行い、キャッシュフローの実態を明確にすることが、不足する資金を調達することにつながります。財務の透明化は、関係者の信頼を得ながら、事業を継続する上でも非常に重要なことです。経営者には、財務の透明性を確保した上で事業活動に邁進して頂きたいと思います。

中小企業診断士 大石祐貴

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