現在、金融庁の審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」で事業成長担保権という新たな担保権が議論されており、2023年中の法案化を目指しています。
これまでは不動産などの物的担保や経営者個人の保証が中心となっていました。新しい担保権はノウハウや顧客基盤等の無形資産を含む「事業自体を包括的に対象とする新たな担保権」という制度となります。米国やカナダ、オーストラリアなどが既に同様の制度を採用してます。
活用方法としては、事業再生、事業承継、ベンチャー支援など様々な分野での活用が考えられます。
例えば事業再生時の経営状況が悪化している企業においては、すでに不動産などの物的な担保は設定しているために、新たな借入が難し状況となっているケースが多いと思われます。このようなケースで融資を受けられないために、新規の積極策が打てず事業の再構築が難しい場合もあります。あらたな事業成長担保権によって融資を受けることが可能になるケースも考えられます。
事業承継の場合は第三者承継のケースでの活用が想定できます。例えばLBOと呼ばれ企業を買収するさいに、譲渡企業の資産を担保としたり、今後のキャッシュフローを期待したりして、譲受企業が金融機関などから資金調達をして買収する方法があることをご存じでしょうか?この場合の担保設定として、事業成長担保権設定の活用も期待できます。
また、従業員などを後継者にした場合に金融機関に対する個人保証を引き継ぐことがネックになっているケースも多いです。事業成長担保権により、個人保証を外すことが可能になる場合もあり得るかもしれません。
審議会のなかででている議論として、新しい担保権の導入にあたっては、事業者は専門家の支援を受けながら事業計画の明確化、金融機関においては事業計画のフォローアップや伴走支援等が議論されています。金融機関の目利き力がこれまで以上に重要になるとともに、企業を支援する能力を問われることになります。
弊社においても、今後、民法改正など制度構築を注視ししつつ、導入を目指す金融機関や事業者の支援を検討していこうと考えています。
*事業成長担保権については様々な課題があり、未確定のため、現在議論されている情報で書いています。
中小企業診断士 竹上将人