脱炭素と実質賃金の上がる社会を目指して

失われた30年など日本経済の停滞が言われて長い。とくに給与が伸びないことがニュースで取り上げられることも多くなりました。実際はどうでしょう。下は主要国の時給換算の実質賃金の伸びです。日本が最下位で1995年からほとんど実質賃金が伸びていないことがわかります。

いったい、日本の実質賃金が伸びない原因は何でしょう。

実質賃金が伸び悩む要因を詳細に見て見ます。
時給換算実質賃金=労働生産性(時)×労働分配率×交易条件(輸出物価指数/輸入物価指数)×その他
となります。
会社で言えば、時間あたりで従業員が生産性を上げてもらえば、そのうち労働者に配分するものが賃金です。ただし、作った商品が安く買いたたかれたり、仕入値が上がったりなどあれば給与に配分できるお金が減ります。これが交易条件です。国内の取引は打ち消されるので日本全体の実質賃金を考えるときは輸出価格が上がったり、輸入価格が下がったりすると実質賃金が上がります。
 さて、日本の実質賃金が伸び悩んだ原因はどこにあるでしょうか?
時間あたりの実質労働生産性はアメリカに次ぐ伸びとなっています。
余談ですが、労働生産性の伸びが低いという議論もよくありあすが、一人あたりの生産性伸びが低いだけで労働時間減少の影響があると言えます。時間当たり生産性の伸びは低くはないのです。
労働分配率も低下していますが、他国ほどではありません。原因はどうやら交易条件にあるようです。つまり輸出品の価格が抑えられ、一方で輸入品の価格が上がっていることが実質賃金を抑えていたのです。
 輸出品の価格が伸びない理由は日本の貿易構造が部品などの中間財や生産設備をアジア圏に輸出するケースが多く価格競争にさらされやすいことが指摘されるますが、むしろ影響が大きいのが輸入物価。エネルギー自給率が低いことでエネルギー価格上昇のたびに交易条件が悪化し国内物価を上昇させ実質賃金を低下させてきたと言われています。
(ちなみに円安は輸入物価を引き上げるが、輸出物価への引き上げ効果も存在するため、140円程度のものであれば交易条件はそれほど悪化させていなません。)

エネルギー自給率の比較(三菱総合研究所ホームページより)

エネルギー自給率が低いため海外からの石油などの輸入に依存せざるをえず、原油価格が上がると、名目賃金の伸び以上に物価が上がり実質賃金を落としていたと言えます。

今後、日本はエネルギー自給率を上げなければいけないが、そのためには企業もエネルギー効率の高い生産や脱炭素関連の技術開発などが今後の日本経済全体の大きなキーワードになってくるものと思われます。

中小企業診断士 竹上将人

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