減価償却不足

減価償却不足が企業再生の現場ではしばしば見られます。減価償却不足とはそもそも何なのでしょうか?
減価償却費は、購入した有形固定資産(機械設備、器具備品、車両など)の経費の計上を経済的な耐用年数にしたがって数年間にわたって分割して行うものです。
製造設備などの有形固定資産は購入後、数年間にわたって事業に使用され収益を生み出す源泉ですから、その費用も数年間にわたって計上しようという会計上あるいは税務上の合理的な取り扱いです。
決算状況の悪い企業では、少しでも赤字を減らすために減価償却費の計上額を減らし、利益を操作することがあります。減価償却不足は適正な減価償却費を計上しないことで発生する減価償却累計額の不足のことです。
ここで、減価償却費の計上額を操作することでどのような問題があるかについて、考えてみたいと思います。
会計上、減価償却費を自由に調整することで利益を操作したのでは、株主や債権者が、投資や融資の判断材料にする経営成績や財政状態を正しく把握出来ない、という問題が生じます。
減価償却不足への対処方法としては、過年度減価償却費として、一気に不足分を特別損失として計上する、税務上の上限額以内で減価償却費を上乗せ計上して不足分を複数年かけて解消する、償却時期を後ろにずらして減価償却累計額が適正な額になる時期まで計上を続ける、などが考えられます。
減価償却不足の発生は、不適正な会計処理による結果ですので、株主や金融機関からの信頼を失うことになります。
我々、企業再生に関わる立場としては、減価償却費を減額して利益額を操作しても長い目で見れば、メリットが少ないことを認識し、本業の改善に注力することを勧めたいものです。

中小企業診断士 大石祐貴

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