生産性の低い中小企業はどうするべきか

 中小企業の生産性は大企業に比べ低いという統計データがあります。

(出典:2020年中小企業白書)

政府が進める賃上げの推進において生産性の低い企業は、賃上げの原資となる利益が確保できず賃上げが難しい状況です。そこで一部では、生産性の低い中小企業は、統合して規模を大きくして生産性を上げるか、廃業するべきだという意見が見られます。

確かに、統合などによる事業規模拡大により業務効率が上がる可能性はあります。また、事業の競争優位性が低く事業成長に対する意欲の低い事業者は、ステークホルダーに十分配慮した上で計画的に廃業することも一つの選択肢だと思います。
しかし、一方で、コストの安い中小零細企業が、非効率な小ロット品の生産や手間のかかる作業を担うことで、大企業の高い生産性を下支えしているという現実があります。

どんな大企業や優良企業でも全ての工程を自社だけで完結することはできません。材料や部品の調達、物流、設備のメンテナンス、生産工程などにおいて多くの取引事業者の関与のもとに事業は成り立っています。
規模の大きい企業は、中小企業に比して潤沢な資金を基に技術開発を行い、下請けの中小企業の柔軟で低コストの供給体制に支えられながら事業競争力を維持しています。
一方、中小企業は、競争力のある企業の需要によって業績を維持している面があります。大企業と中小企業は相互に依存しているというのが実状だと思います。

そのような現実を踏まえると、中小企業は統合による大規模化や廃業以外にも、顧客企業や市場の需要に対し自社の独自性を磨き競争優位性を高めることで生産性を上げるという道があり、主体的に事業成長を目指すにはこの道が現実的だと思います。
自社の存在意義を考え、顧客の開拓や選別による戦略的な営業方針や、ニーズに対応した技術開発や投資によりシェア拡大、利益率向上を目指すなど、生産性を上げるための取組みは色々と考えられます。
中小企業の生き残りのためには、顧客企業とウィン―ウィンの関係を築き継続的なビジネスモデルの構築によって生産性向上を目指して頂きたいと思います。

中小企業診断士 大石祐貴

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