少し視野を広げて物事を捉えてみてはいかがですか

 経営改善計画書を作成するとき、自社の事業環境を把握するためにSWOT分析を活用します。SWOT分析とは自社内の強み・弱み、事業に影響を与える機会・脅威を分析するものです。経営者とのヒアリングでは、ビジネスモデルを知るとともに、経営者が考える強み・弱み、機会・脅威について確認しながら窮境原因や改善策を検討していくのですが、このヒアリングを通じてたびたび感じることが2点あります。

1点目は、経営者が「弱み」と考えていることも捉え方次第で「強み」にできることが多々あるということです。金属加工業者の事例ですが、ある経営者は「うちの加工機械は古すぎて、従業員が作業しないといけない工程が多くて生産効率が低い」と老朽化した設備を「弱み」と捉えていました。一方で、他の経営者からは、「最新の設備を導入したけど、最近は小ロット受注が多いから生産効率が上がらない。このくらいの数量なら前の設備を使って従業員が加工した方が効率はいい」とか「試作などの個別加工は昔の切削機の方が対応しやすかった」などの話を聞くことがあります。最新機器導入により古い設備を処分した経営者から見れば、老朽化した設備、つまり旧式の加工機械を持っていることはうらやましいことのようです。つまり、先ほどの経営者も旧式の加工設備があることを「強み」と捉えれば、新たな取引のチャンスが見つけられるのではないでしょうか。

2点目ですが、経営者は自社の事業を取り巻く外的環境の動向について意外と関心が低い、ということです。顧客や取引先との販売価格や取引単価、取引条件など日ごろから頭を悩ませていることについてはいろいろと話が出ますが、事業の機会や脅威になりえる外部環境の動向については、余り話のネタがありません。環境変化は顧客や取引先企業のニーズも変化させます。どんなに素晴らしい技術やサービスを提供できるとしても、顧客や取引先のニーズに対応できなければ生き残ることができません。

事業がうまくいっていないときは、目の前の問題に固執しがちになります。SWOT分析を通じて、少し視野を広げて違った方向から物事を捉えてみると、まだまだ改善のチャンスがみつかるのではないかと思います。事業再生支援を通じて、経営者が気づいていない強みや機会を見つけるお手伝いができればと思います。

中小企業診断士 梅村 薫

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