最近政府は賃金の引き上げを推し進めています。賃金を引き上げるために事業者は、その原資となる利益を上げる必要があります。利益を上げる手段の一つとして省力化のための設備投資が考えられます。設備の導入による省力化で人が行う作業を減らすことで、生産工程の合理化による人件費削減、求人難による機会損失の防止などの効果が考えられます。
ここで省力化により人件費が抑えられるという効果を考えると、省力化設備の導入は従業員の賃上げに対し逆行するように感じてしまいます。先日ある経営者と話をしている時にも、省力化設備を導入することで業務の機械化が進み、従事する人が減ると、従業員の給与は減っていくのではないかと思うと言っていました。
確かに、様々な業務が機械に置き換えられることでこれまで人が行っていた作業は減っています。例えば製造業の生産工程における材料供給や製品排出のロボット化や、EC事業者の製品倉庫のピックアップ作業、飲食店の配膳ロボット、セルフレジなどこれまで人が行っていた作業の多くが機械に置き換えられています。さらに生成AIの出現により今後は弁護士や税理士などのホワイトカラーの仕事についても置き換えられる可能性が出てきています。
様々な業務の機械化が進むことが確実な状況において私たちが価値を発揮するために考えるべきことは、人でないとできないスキルを磨き、機械に置き換えられない付加価値のある仕事で成果を上げることだと思います。
・信頼関係の構築
・人間味の感じられるコミュニケーション
・新しいアイデアの創出
などは、まだロボットやAIには出来ない仕事ではないでしょうか。
今後DXが進みロボットやAIの活用が一般化することは確実です。機械でも行うことができる仕事しかできない人は高い賃金を得ることは難しくなるでしょう。
そのような状況において、事業者は機械に置き換えられる業務は効果的に活用し、人でないとできない付加価値のある業務のスキルを磨くことで事業競争力を確保し、従業員の賃上げにつながる利益を確保するべきではないでしょうか。ロボットやAIが台頭するこれからの時代に人間でなければできない仕事の価値はますます重要となると考えます。
中小企業診断士 大石祐貴